小笠原 父島旅行記 ~エピソード3~ 船上編④ 一日目 ~夕日、漆黒の闇~
ふと目が覚めた。
ぼーとして今どこに自分が居るのか、一瞬分からなかったが、狭い二段ベッドの中で船の中であることを理解し時計を確認した。
午後5:30分...
約1.5時間寝ていたことになる。
あ!夕日
急いでカメラを準備してデッキへと向かった。
5デッキから6デッキに移動して窓から見える色は黒く見えた...
6デッキの扉を開けると日は完全に沈み漆黒の闇が広がっていた(´;ω;`)
船上での楽しみの一つが夕日鑑賞であった為、少し落ち込んだが気を取り直して屋上デッキに向かった。
屋上デッキに上がると人影はまばらで、ベンチシートに横たわり空を見上げている人が数人いる程度だった。
屋上デッキは温暖な気候であるとはいえ風が強く少し肌寒かった。
夕日も見えないことだからすぐにでもレストランに行き夕食をと思ったが、せっかく屋上デッキに来たことだしポケットに入っていたiPhoneで黒く染まった海を見ながら音楽でも聴くことにした。
数曲聴いてところで、体が少し冷えてきたので屋上デッキを後にしようとしたときに、「あいみょんの猫」がBTでつながったイヤホンから流れてきた
拍手とギターの弦の音
すこしハスキーな歌声
夕焼けではないけど、歌詞が心に突き刺さる
僕は会社を辞めてしまった
明日が不安でとてもいやだ
明日ってうざいけど来てしまう
会社の事なんか忘れてやるさ
ばかばかしいだろ?
若くない僕は1から始めるこては可能なのか
願うことは無駄なのか
いつか君がふらっとあらわれて僕はしあわせで...
俺の心にあいみょんの歌声が心地いいほどに突き刺さる。
それは突然やってきた
あいみょんの歌声に感動して涙流すなんて生易しいものではない
ほほを涙が伝う...なんて生易しいものではない
嗚咽!
圧倒的!
嗚咽...
自分でもびっくりするぐらいの嗚咽
屋上デッキ特有の風切りの音やエンジン音にかき消されていなければ、ベンチシートに寝転ぶ人たちが振り返るくらいの嗚咽...
自分でも引くぐらいの嗚咽
こんな風に泣くのはいつ以来だ?
ひとしきり泣いた後に冷静に考えても思い浮かばないほどの嗚咽
雲は流れる
足早に
俺の事なんか知りもしないくせに
頑張れ!なんていってんじゃねよくそが!
俺は海に向かって叫んでいた...